合宿免許を発表

その頃からSの記事があちこちに出るようになった。
(中略)のちにKはMにもそうした夜のつきあいの重要さを教えた。 Mは酒はほとんど飲まないが、足は向けて、そこにたむろする人々と会話を楽しむようになった。
あの調子だから、たちまち仲よくなってしまった。 彼らの言葉通り、またたく間にMという名前を、マスコミ界にも売っていった。
(「大事なことはすべてMが教えてくれた」)今ではどの企業もマスコミを味方にして世間に好感を持たれるように画策する。 広報という部門は、そのためのコントロールタワーでもある。
Sは極めて早い段階からマスコミを味方につけ、Sイメージを形成することに腐心した。 M氏にも、プロの策士達の要求に応えるだけのセンスがあった。
「学歴無用論」なども、その典型であったろう。 今までの日本企業にない清新な志を持つ企業、古い因習に囚われない企業、常に新しいものに挑戦する企業……、Sの企業イメージは、その作り出す商品以上にM氏という経営者像を核にして浸透していった。
しかしこのことは、一歩間違えば、言うこととやることの違う会社として非難されるだけであったろう。 M氏の場合、I一社長の器の有無HのH氏がS氏のあとを襲って社長になろうとしたことはあったろうか。
M氏同様、経営を握っていた実質的な最高実力者であった以上、その気になれば可能だったはずである。 違いは年危険を内包していたことになる。

M家の世襲問題があれほど問題にされたのはそのためである。 スターになった者の代償と言うべきであろう。
それはそのまま、スターブランドを持ったSという企業の宿命でもある。 氏の場合、I氏と過歳の開きがある。
次期社長として手頃な年齢差であった。 H氏の場合、S氏と4歳しか開きがなかった。
H氏もそのことを考えたことは皆無ではなかったはずである。 しかし、H氏はその道を自ら閉ざした。
その理由を親しい人にはこう言っている。 「HSの方が、あたしより欠点が多いからね……」この言葉には、H氏のS氏に対する屈折した心情が惨んでいると言わねばならない。
企業経営の修羅場においては、管理実務だけならテクノクラートとしての知識があれば十分である。 重大な意思決定においては、経営者としての識見が問われる。
ともにH氏は、S氏より自分の方が格段に上だと思っていた。 しかし、それだけで企業活動が活性化するわけではない。


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